CDではありません、LPです。トピックレーベルから出ているようなトラッド・ミュージックに針を落とす時、歌われている歌詞や時代背景をどのくらい理解し消化できるものなのか、考えざるを得ません。これが例えばFairport Conventionとかだと「うおー初回マトリクス〜しかも演奏かっこええ〜」みたいな感じで済ませていいと思いますが、これがポピュラーでない無伴奏トラッド歌謡&ポエトリー・リーディングともなるとなかなかそれもできず、襟を正して深遠なバックグラウンドに向き合うことを強いられる思いがします。こちらのアルバムは故郷を離れ第一次世界大戦に赴いた顔なき市民の物語が取り扱われており、淡々と進む内容からは報道や記録という剝き身のトラッドがかつて持っていた特性の残滓が感じられます。ピストルズやらクイーンの伝説のチャンピョンやらコステロのアリスンやらがヒットしていた横で、こんな真の意味で商売にならなそうなものを作って出す人がいたという歴史的事実と、それが表すGBの文化度の深さと広さに、ひたすら敬意を覚えます。とかく日本には縁の遠いトラッドの世界ですが、裏ジャケットの旭日旗を見るに、彼の地と我が地が同じ地平上にあることをかろうじて想起させてくれます。その後に両帝国が同盟破棄からWW2の血みどろの戦いを繰り広げることになるのもまた、歴史の皮肉です。

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